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| 10月31日(月) |
最近、人に会うたびに宣言してきたのだが、今日から一週間、あるプロジェクトに挑戦しようと思う。
「ヘルシーウィーク」とでも名づけることにしよう。特段のひねりのないネーミングだが、具体的には、
@30分早起きする。
Aバランスのよい朝ごはんを食べる。
Bできるだけ歩く。
C日付が変わる前に寝る。
そして・・・
Dお酒を飲まない。
はい、みんなに無理だと言われました。でも私はやります。やる女です。あ、ただし11月2日だけは、前々から友達と会う約束があるので、多少飲むと思います、でもちょっとだけにしときます。
えーと、どうしてこんな決意をしたかというと、まあ、ちょうど今週はわりと予定が空いていて実行できそうだったのと、稽古が始まるとまず無理なので挑戦するなら今のうち、と思ったわけである。
実際の話、私の生活習慣は惨憺たるモノである。だいたい寝るのは早くて1時、うっかりすると3時近くになってしまうし、そうなると早起きするのは大変に辛く、朝ごはんは適当にそのへんにあるものでひとまず空腹を埋めるだけ。唯一、運動不足ではないと思うが、それも稽古休止期間となるとあまり自信は持てない。そして、自慢にもならないけど何より日常の飲酒量が半端でない。1週間に私が飲むビールの量をお風呂に入れたら、軽く半身浴ぐらいはできてしまうかもしれない・・・。
あ〜っ、だめだ、こんなんじゃ!生活習慣をととのえたら、ただそれだけでガラリと変身するかもしれないじゃないか!突然3キロぐらいやせるかもしれないじゃないか。おなかがへっこんだり、ウエストが締まったりするかもしれないじゃないか。お肌つやつやのすっぴん美人になるかもしれないじゃないか。万年ドライアイが治るかもしれないじゃないか。朝から頭脳明晰のデキる女になるかもしれないじゃないか〜!
ということで、よい生活習慣の効果を実感してみるべく、「ヘルシーウィーク」に取り組むのである。効果のほどは、請うご期待♪
しかしまあ、よい生活習慣を実行するのはなかなか難しいことだ。よい生活習慣が健康によいのは重々分かっている、でも実行できない。それはなぜか?よい生活習慣を実行するとなると、さまざまな制約があって、他にやりたいことがままならないからである。たとえば、本のしめきり前や公演前には、極端に睡眠時間が減る。それしか、時間の稼ぎようがないからだ。そのうえ、稽古だ打ち合わせだと酒量が膨大に増える。芝居というのは実に不健康な活動である。しかし、だからと言って芝居を辞めようとは思わない。
つまり、Quality of Lifeとの駆け引きなのである。もちろん健康を全くないがしろにしてはそもそもQOL自体が成り立たなくなるので、そこはバランスの問題だが、いい大人が一人で、望ましい生活習慣を完璧に実現しているとしたら、それもまた無味乾燥な毎日ではないか。
まあ、私の場合は今あまりにも健康を過信しているので、そのうちしっぺ返しを食うかもしれない。あるいは、本当はもっと生き生きと生活できるバランスポイントがあるのかもしれない。それを探る一週間にしようと思う。
ちゃんと、ビール代わりにハーブティを飲みながら書いた、気球日記でした。
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| 10月29日(土) |
今日はなぜだか無性にイライラする一日だった。
夕方、殺陣教室の稽古場の支払いのために、早めに家を出る。時間内に着いたのに受付の人にごちゃごちゃ文句を言われて言い合いとなり、非常に不愉快だった。
くさくさしながら、時間をつぶすために駅前のミスタードーナツに入ると、同じように木刀を持った人に「殺陣教室の方ですか?」と話しかけられる。新しく来た人かな、と思い、「よろしくお願いします〜」などと話し始めたが、どうも話がかみ合わない。どうやら、別の稽古場でも同じように殺陣教室があるらしく、おたがいに勘違いしたのであった。でもまあせっかくなので、夕飯を食べながら小一時間話をした。
殺陣をやっているから当たり前だけど芝居をする人で、来月あるという舞台のチラシをくれた。すると、先日観た偉人舞台の人と共演していたりして、妙に話が合ってしまい、初めてなのにいろいろ話ができた。
じゃあ、ということで店を出るころには、最初のくさくさした気分はすっかり治っており、人と関わることって大切だなあ、とあらためて思った。関わってイライラすることもあるけど、いい力をもらうこともたくさんある。
その後、殺陣教室へ。
今日は、見学の人が3人来て、稽古内容もけっこうハードだった。結局その3人が全員入会することになり、飲み会も盛り上がる。みんな楽しそうな人で、メンバーが増えてとっても嬉しい♪
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| 10月27日(木) |
仕事仲間と、3人で書いている本の原稿の締め切りが、今月末である。それは何ヶ月も前から分かっていたのに、あわて始めたのが、ここ2週間ぐらい。昔から、何事もコツコツはできないたちだったが、締め切り間際にならないと腰が上がらないこの性格は、いつかどうにかしないといけない。
今日は3人で集まって、進捗状況を話し合い、最終打ち合わせをする日だった。進捗もなにも、ほとんどできていない私は、おそるおそる今出来ている分の原稿を差し出す・・・あれ?他の2人もあんまり進んでいないみたい^^)。低レベルな安心感をおぼえ、「でもこれ、完成したらかなりいいよね〜」とできてもいないのに自画自賛して、あとは仕事がらみの雑談に興じた。・・・ま、この原稿書きは、週末にがんばろう。
そうこうするうちに、来月末にもまた締め切りが。。。こっちのほうがコワイかも。
しばらく稽古が休みで、いろいろな人と会ったり、逆にひとりで過ごしたりする時間があるせいか、最近はよく考えごとをしている。
いったい、自分は何者なのか?
ものぐさなのかまめなのか、いいかげんなのか几帳面なのか、優しいのか冷たいのか、何が一番大切なのか?
仕事に行って、本を読み、人と話し、ビールを飲む、その他諸々。そのくり返しの中で、どうしてもやりたいこと、自分にしかできないことはなんだろうか?それをいつも確かめていたい。自分と馴れ合うような毎日はいやだ。自分の中では、最先端でいたい。気がつけば時代遅れになっているような、そんなブームにしがみついていてはいけない。いやむしろ、自分にとってブームではないものを探すのだ。
そんなことを考えていると、ますますドライアイになりそうなので、たまには山にでも登って、自分を天日干ししようかと思う今日この頃。山はそろそろ紅葉が始まっているんだろうな。
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| 10月22日(土) |
久しぶりに、ゆっくりできる休日。と思ったら、起きたら午後3時を回っていた。。。ゆっくりしすぎだっっ!
たしかに最近極端に睡眠時間が短くて、「ねむい、ねむい」を連発していたからまあたまにはよかったのだが、数えてみると14時間も熟睡していたことになる。しかも電話の音でようやく起きたので、電話が鳴らなかったらいったいいつまで寝ていたのか、そんな自分がおそろしい・・・。でも、気持ちよかったなあ。
寝ぼけつつ、池袋のシアターグリーンへ芝居を観に行った。シアターグリーンは、立て替えたばかり。メインホール、171(中ホール)、小劇場と3つの劇場をそなえている。受付で、客演稽古帰りの忍ちゃんと落ち合う。
今日見たのは、偉人舞台という劇団の「リバースルーム」。キャストは男性ばかり8人。ギリギリで入ったので、桟敷で最前列、しかもドセンターだったので迫力満点だった。
本書きに苦しむ作家が、自分の本の状況と同じく閉じ込められた部屋に身を置いて、妄想と現実の境目が見えなくなっていくような内容で、かなりダークなサスペンスだった。だけど、私はけっこう気に入った。自分も物語をものす人間だからかもしれない。で、おせっかいながら作者の心中が察せられたり。
私は、良くも悪くもどちらかと言えば根本的に明るい人間で、自分を極端に追い込まないバランスのとり方を知っているが、それは物書きとしては必ずしもプラスに作用するとは限らない。どろどろした感情の淵から、あるいは崖っぷちギリギリから届く物語は、否応なく見る者の心に訴えかける。でも、それは諸刃の刃で、バランスのとり方を間違えれば自分も引きずり込まれて帰ってこれなくなるかもしれない。もう一歩、もう一歩と崖っぷちに迫る勇気、そしてどこまで行っても必ず帰ってこれる強さが両方必要なのだと思う。感情だけでも、バランスだけでもダメなのだ。
あと役者陣が、ただカッコいいとかじゃなくて、みんな個性が濃くて人間くさくて、ダークだけど魅力的だった。
帰り道、忍ちゃんと軽く飲んで帰る。忍ちゃんにはやっぱりカルアミルクが似合う。
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| 10月21日(金) |
今日は、作・演出飲み。サシ飲み初めてだったわりに、ずいぶんたくさん話して盛り上がった。
考えてみれば、作・演出というのはたいがい劇団に一人だし(中には交替でやってる劇団もあるけど)、役者やその他のスタッフと比べて、他劇団の作・演出と関わる機会があまりない。でも、時にはおたがいの世界観を話し合って、共通点を見出したり相違点に気づいたりすることも、おもしろいことだと思った。芝居作りの姿勢からも学ぶことがたくさんあったし、バイタリティあふれる人と話すのはやはり楽しい。もちろん、たわいもないことも含めて。そういう機会があったことに感謝☆お疲れさまでした。 |

今日のお店は、昭和レトロな雰囲気でおもしろかった。
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| 10月20日(木) |
仕事帰りに、劇団員ミーティング。
いつものように居酒屋だったが、たまたま予約していた部屋が夜景の見える個室で、しかも円卓。落ち着いて静かだし、劇団員しかいないので、なんだかお正月の親戚の集まりのようであった。
そのままだらだらと寛いでしまいたい衝動に駆られたが、今日の劇団員ミーティングは議題がいっぱい。晶子さんからは会計関係のふり返りと次回公演の大まかな予算について、ユージンからはアンケートからのふり返りを中心に次回へ向けての課題について、資料や提案が出される。そして、次々回公演の小屋のことや、12月に行う気球初のワークショップについても意見交換。あれやこれやと話しているうちにあっという間に11時を回っていた。
これで、ようやく第7回公演が終わった感じだ。劇団員は全員、役者としての仕事以外にそれぞれスタッフワークを分担したが、適材適所で頼もしかった。みんなありがとう。お疲れさまでした。
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| 10月19日(水) |
夜、新宿で仕事の打ち合わせ。
こういった打ち合わせのときによく利用していた談話室滝沢が閉店となったが、同じ場所が椿屋珈琲店として新装開店したので、今日はそこを使った。おやじだらけだった滝沢よりぐっとおしゃれになった感じで、居心地よし。そう言えば、滝沢の店内を流れる川(?)の中を泳いでいた錦鯉たちはどうなったのだろう。日の目を見られただろうか。
公演がらみのことが一段落して、最近仕事面でエンジンがかかってきた感じ。ぶるるるるるる・・・。この調子でいこう。
と、わりといい気分で帰宅してみると、職場に自宅の鍵を忘れて、家に入れなかった。。。うう。一人暮らしってこういうときに悲しい。荷物をひっくり返して鍵を探している間にも、買ってきたおでんがだんだんと冷めていく。うう。悲しい。まあ、こういうことは実は初めてではなく、学ばない自分が悪いのだが・・・以前は鍵の救急車に来てもらった。幸か不幸か、我が家のドアはセキュリティ万全のピッキング対応なので、そのときはのぞき穴から特殊な器具を差し込んで鍵を開けてもらい、¥15000もかかったのであった。あのときに比べれば、今日はまだ電車があるだけまし。そう自分に言い聞かせて、おでんをものかげに隠し、職場まで鍵を取りに戻る。警備員さん、ゴメンナサイ。
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| 10月18日(火) |
夜、ひとまず我が家に保管していた大道具や公演グッズを、西荻窪の倉庫へ運ぶ。最初はタクシーで運ぼうかと思っていたのだが、荷造りしてみると意外にたくさんあったので、今回はタウンページで見つけた地元の運送屋さんを利用した。やって来た運送屋のおじちゃんと話しながら、西荻窪まで約30分のドライブ。おじちゃんは73歳とのことだったが、元気いっぱいな感じで、自分の好きな株の話をたくさんしてくれた。「株でもうける人というのは、どこか余裕がある。もう少し待てばもっと上がるかもしれないと思っても、後の分は他の人が儲ければいいと割り切って、手頃なところで手を引く度量がある。」と言っていた。なるほど、と思った。最近思う。為さないことも、選択のうちなのだと。何かをすることも、何もしないことも、その人の選択次第で、結果はもれなく自分にはね返ってくるのだ。芝居のことも、「それはいい。」と目を細めてくれて、なんだか楽しい道中だった。
倉庫に着いて、電車でやって来た晶子さんと乃維ちゃんと合流し、荷物を詰め込む。そう言えば、気球の劇団員の中でも、倉庫の場所を知っているのは実は私だけだった。三人であっという間に荷物を積み終わり、倉庫をあとにした。
その後、三人で高円寺会館へと向かう。
次回は、杉並演劇祭参加作品なので、区の施設を使わせてもらえることになったのだ。私たちの劇場となるのは、この高円寺会館。中を見たことがないので、まずは下見に。人のよさそうな受付のおじさんと、小屋付きさんらしいおじさんが、中の案内をしてくれた。
もうずいぶんと古い施設だった。音響・照明の設備はもちろんあるものの、素人の私が見ても前時代的なのだ。おまけに、バトンはワイヤーの不具合でいつ落ちるか分からないので、降ろせないと言う。ブースには、今どきなかなかお目にかかれない、16mmの映写機が2台。「いつでも使えますよ」と言うが、いやいや、今どきはプロジェクターでしょう。
そんなこんなで、正直、最初はびっくりしたが、なんとなく味もあるのだった。聞けば、私たちが使う3月末で、建て替えのために閉館になるという。今まで、どれだけの作品をここに乗せてきたのかなあと思った。最近は若手芸人のお笑いライブによく使われているそうだが、きっとたくさんの物語を見守ってきたのだろう。客席も舞台も広いから、工夫次第で変わった試みもできそうだ。よし、と心を決めてホールを後にする。
3月、高円寺会館で第8回公演「言の葉の一滴」を打ちます。お楽しみに!
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| 10月17日(月) |
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公演が終わり、一昨日には反省会も終わって、ひと区切りついた。先週のうちにチケットの精算やビデオのダビングもあらかた片付いた。我が家の部屋の散らかり具合がいまだに公演の名残りをとどめてはいるが、そちらの方はなかなか手を出せないでいる。
ある作・演出の方が「舞台を作るのは恋をするようなもの。だから終わったあとの感傷は失恋に似ている。」といった内容のメールをくれた。今回の公演は、恋愛にたとえるには向かないくらい重かったけれど、たしかにそんな気もする。反省会でみんなでビデオを見ていて、あらためて感慨深いような、でもどんどん別物になっていくような、不思議な気分だった。寝る間も惜しんで想い続けてきたのに、終わった瞬間から確実に遠くなる。そして、かなしいことには、どんどん別物になっていくのは作品ではなくて、自分の方だということだ。時間が経って、変わっていくのは私なのだ。でも、私ももういい大人なので、背筋を伸ばしてちゃんとお別れしようと思う。これだけ好きになれる、一生懸命になれる対象に出会えたのは幸せなことだし、一緒に過ごした時間のかけがえのなさはずっと変わらない。そういう対象を得られた何かの必然に、私は感謝しようと思う。・・・これってやっぱり恋愛に似ている。
失恋の痛手を癒すには、新しい鯉をするとよい・・・間違えた、新しい恋をするとよい、とよく言われる。ということは、物語が終わった痛手を癒すには、新しい物語を書けばよい?・・・うう、無理だ。恋愛でもすぐに新しい恋なんかできないのに、すぐに新しい物語なんか書けるわけないもん(泣)。ということで、リハビリがてら、ひとまず本を読み始めた。そう言えば、ここのところずっと取材目的以外の本を読んでいなかった。読みたい本はたくさんあったけど、私の中に他の物語の入る余地がなかったからだ。
重松清の「その日の前に」を読んだ。ものすごく泣けるらしいという話題の一冊だったので、ぶらりと立ち寄った本屋で購入。自分や周りの人の死という避けがたい現実とともに生きる人々の、限りある日常を描いた短編集だった。ものすごく泣けたかと言うといささか誇大広告のような気もしたが、淡々としたどこかノスタルジックな筆致に素朴な感情が感じられて、読み心地がよかった。周りの人がもうすぐ死ぬとしたら、どうするだろう。それほど親しい人でなくても、その人の生きてきた人生を思ってかなしくなるかもしれない。それに、自分がもうすぐ死ぬとしたらどうするだろう。冷静でいられるのかなあ。苦しむのはいやだな。でも、それはそれとして残された時間をいつくしんで生きるかもしれない。
公演は終わるもの。今日のような日がいつまでも続くとは限らないから、今日できることを積み重ねていくのだ。
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| 10月13日(木) |

ありがとうございました! |
第7回公演「Forget me not」終了。
3日間雨に降られてしまいましたが、足元の悪い中、おおぜいのお客様が観に来てくださいました。心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました! |
| ◆◆◆ |
たびたび気球日記にも書いてきたけれど、今回の作品「Forget me not」は、17年前の事件に端を発して書き始めた物語だった。
私は、感情というのは、学んで身に付けるものだと思っていた。しかし、あの事件の犯人の一人・神作譲を見て、あらためて事件のことを調べ、今まで経験したことがないほどの憎しみが身の内に湧いてきたとき、この負のエネルギーはもともと自分の中にインプットされていたことを思い知った。吐き気がするほど、涙が出るほどの憎しみを経験したのは初めてだった。
しかし一方では、こうした本能的な負のエネルギーは、発路を間違えれば、実際的な破壊力を持つだろうことも想像できた。そういう意味で、おそらく負のエネルギーに満ち満ちていた彼らの行動のひとつひとつは理解不能なものではなかったし、人格異常のモンスターだとは思えなかった。おそらく加害者側には、ボタンをかけ違えた程度の認識しかなかったのではないかと思うのだ。ひとつボタンをかけ違えたことで、また次のボタンもかけ違える。しかし、そのように負のエネルギーが重積していくと、「どうして?」としか言えないほどの理解不能な悲劇にたどり着き、加害者側と被害者側の認識のズレは絶望的に深い。
いろいろな事件を日々見聞きするけれども、人々の本当の哀しみは事実の底にある。そして、罪を犯した人間にも、大切な人を失った人間にも、命ある限り明日は来る。その明日をどう生きていけばいいのか、さまざまな立場で葛藤を続ける人がいる。答えは見えなくても、せめてその声にならない声を伝えたかった。そして、負のエネルギーに対抗するプラスのエネルギーを探したかった。
思い返せば思い返すほど、あの事件の被害者となった女の子のことが、たまらなくかなしい。どうして17歳で、あんなひどい目に遭って、命を落とさなければならなかったのだろう。これからというときに、どんなに無念だっただろう。生きていれば今年で34歳になっているはず。誰かの妻や母になっていたのかもしれない。
今回の公演の稽古をしながら、何度も彼女の顔が頭をよぎった。中途半端なことはできないと思った。かと言って、この重たいテーマを放り出すこともしたくなかった。軽々しく扱えないから、かえって失礼だからと、もっともらしい理由をつけたとしても、やっぱりそれは逃げでしかないと私は思う。なぜ自分は今、このテーマに出会ったのか?出会った以上、自分にできる精一杯のことをやりたかった。
「Forget me not」が、せめて彼女に捧げる花束にでもなったなら、私としては本望である。 |
| ◆◆◆ |
そんなこんなで、今回は読み合わせも含め約3ヶ月間、稽古を行った。
重たい作品だけに好みが別れるのは覚悟の上だったし、この思いに共感できる人、そしておたがいのコミュニケーションを大事にして芝居ができる人にやってもらいたかったので、劇団員も含めて出演の意志を問いながら、ずいぶん考えてキャスティングを決めた。
私は基本的にはO型らしいアバウト演出だが、今回はかなり細かくこだわり続けた。自分も演出として成長したかったし、思い入れの深い作品だけに、これでできないことはこの先もずっとできないだろうという覚悟もあった。なので、役者にもスタッフにも、今までになくいろんなことを要求してきたと思う。また、そもそも憎しみやかなしみから生まれた物語だったので、稽古も今までにないしんどさがあった。かなしみはともかく、憎しみという感情は日常的な感情ではないので、全員でそれを絞り出すことにエネルギーが必要だった。稽古場では、みんな本当によく泣いた。ともすると感情的に取り込まれそうになるので、稽古の後はどっと放心する者や、体調不良を起こす者、続出。だんだんとみんなの顔が変わっていって、負のエネルギーにとらわれたとき、人は本当に般若になるんだなあと実感した。私はというと、だんだんと役者たちが般若顔になればなるほど、汚くなればなるほど、心底うれしくなるのだった。やっぱり、どエスなのかもしれない。
それは冗談として、それだけしんどい作品だったけれども、私にとって稽古は楽しく意義深い時間だった。いろいろなことを感じ、考えた。役者全員が最後まで誠実に役と寄り添ってくれたこと、スタッフ陣が作品の空気を作り上げるために妥協なく心血を注いでくれたことに、心から感謝したい。余人をもって代えがたいメンバーと一緒に、「Forget
me not」を世に送り出すことができ、私は主宰としても作・演出としても本当に恵まれていた。みんながとても愛おしかった。作・演出をしていて、こんなふうに幸せを実感したのは初めてだった。こんなに本番が楽しみだったのも、初めてだと思う。久しぶりに、終わったことが本気でさみしい。
そして、いろいろなことを今回の芝居の題材に終わらせず、ずっと胸に刻んでいきたいと思う。
みんな、本当にありがとうございました☆ |

心の支えにと連れて行ったリサとガスパール。どっちもカワイイ♪
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| 10月9日(日) |
そして中日。
今日は小屋入りが10時だから、朝がちょっと楽。みんなの入り時間は11時だから、はじめは人も少なくて、しんとした劇場の空気を味わう。お客さんでいっぱいの劇場も好きだけど、誰もいない劇場も好き。今日は、本番3日間のうち唯一、2ステージの日だ。今のうちに心を落ち着けておこう。
マチネは、またまた大入り満員だったが、今回はどうにか全員座って観ていただくことができた。ソワレは、今回の4ステージの中では一番予約が少なかったので、客席をすべて椅子席にした。本当は、芝居の内容的にも、どのステージも桟敷なしで椅子でゆっくり観てもらいたかったが。
帰りは、観に来てくれたお客さんと飲みに行った。いろいろ感想を聞きながら、稽古の様子を振り返ったり、今回の作品に対する想いを語ったりしていると、もっといいものにできそうな気がして、また明日のステージが楽しみになってきた。明日の千秋楽の前に、もう一度みんなに話をしようと思った。今は、今回の芝居のこと以外、何も考えたくない。
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| 10月8日(土) |
いよいよ初日。
今日は場当たり・ゲネ・そして本番と、盛りだくさんな一日だ。照明・音響・映像、そして芝居とすべてを合わせてみるのも、今日が初めて。朝から気合いを入れて劇場へ向かう。私は例によってプロジェクタ係だが、今回は映像自体はとまっちがブースから出してくれるので、私はふたの開け閉めだけ。それだけでもずいぶん気楽だ。
だいぶ血眼ながらも、どうにか順調にゲネを終え、客席を組んだときにはすでに18時になっていた。なんと!あと30分で開場!しかも、この回はもともと予約が多かったうえに駆け込みの予約がずいぶん入って、混雑必至。その前情報を聞いて、18時にはもう並んでいるお客様もいた。
いざ開場してみると、この回はさらに予想を上回る混雑ぶりで、中には非常に見づらい位置からの立ち見になったり、ほとんど見えないからとお帰りになった方もいたりした。できるだけ多くのお客様に見ていただきたいとは言え、客席管理について大きな課題が残った。客席で辛い思いをさせてしまったお客様、本当に申し訳ありませんでした。
体力の要る一日だったが、何はともあれ初日の幕を開けることができたので、帰りにささやかな初日打ち上げをする。帰り道、電車で寝過ごし、タクシー代がかさんだのはちょっと痛かった;;
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| 10月7日(金) |
いよいよ仕込み。
小屋入りの仕切りを忍ちゃんに託し、午前中は仕事へ行く。何となくそわそわと落ち着かないが、忍ちゃんがいるからきっと大丈夫。午後は休暇をもらい、昼食も食べずに職場を出る。職場のみなさん、ゴメンナサイ。今日だけは!お許しを!
13時、劇場到着。ロビーでは、桜井さんと仁美ちゃんがせっせと準備を進めていた。無事に小屋入りできたことがすごくうれしくて、これから始まる公演がやたらと楽しみで、いきなりテンションが跳ね上がる。さっそく舞台をのぞくと、当日スタッフも含めて大勢の人が、大道具の建てこみや照明の吊りこみに精を出していた。ありがたや。舞台は、早くも大枠が出来上がっていて、すでにそこには緑地公園が!丸太の感じや、壁の汚れ具合がいかにも公園らしくて、感動する。ブラボー、染谷さん!
それから、私は受付まわりのセッティングに入った。今回は、せっかくロビーも広くてきれいな劇場なので、今までの公演チラシを掲示したりして、飾りつけをする。そして、販売用台本の製本や、気球Tシャツの袋詰め、アンケートボードのセッティングなどなど。そちらが一段落した頃に、ちょうど仕事帰りのメンバーも続々と集まってきた。
夜になって、照明と小道具の場転を中心に、できるところまで場当たり。今回の照明プラン担当の齋藤さんと、オペ担当の渡辺さんは、大学時代の先輩・後輩に当たるそうで、時折齋藤さんから渡辺さんに、照明効果についての指示が入る。私と染谷さんは、横でそれを聞きながら、「ん〜、奥が深い。。。」とひたすら感心するばかり。齋藤さんに照明を担当してもらうのは前回に続いて2回目だが、温度や空気を感じさせる、実にていねいな明かりを作ってくれる。特にオープニングの明かりは凝っていて、齋藤さんの気合いが感じられた。場当たり途中から、はなまる大作戦の音響さん、晃さんが陣中見舞いに駆けつけてくれた。
10時に小屋を出て、晃さんと一緒に新宿へ移動し、仕事帰りのとまっちと落ち合う。まだ曲が決まっていないシーンの候補曲を預かり、打ち合わせかたがた3人で飲む。明日に備えて終電前には電車に乗ったが、晃さんはこれから知り合いのレコーディングに赴き、スタジオで朝まで過ごすとか。まったくタフな人だ。
帰宅して、とまっちから預かった候補曲のCDを3枚聴く。とまっちらしい、そして今回の舞台に似つかわしい、しっとりとした雨音のような曲で、どれも聴き入ってしまう。3枚目のCDに、これは、と感じる曲があったので、聴きながら台本を声に出して読んでみる。アルバムのシーンだ。自然と涙が流れてきたので、これでいくことにする。考えてみれば、自分で書いた本ながら、声に出して読んでみたことってあまりなかった。黙読するより、声に出してみた方が、言葉はずっとリアルになるのを実感した。
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| 10月6日(木) |
昨日で稽古場での稽古は終了。稽古後、染谷さんと最終打ち合わせ。10時過ぎにとまっちも駆けつけてくれて、音響についての打ち合わせをする。今回、とまっちとはなかなか打ち合わせの時間がとれない中で本番まぎわまで来てしまった。まあ、音響とまっちのセンスを信じているので、そんなに心配はしていないのだけれども、最後にあらためて話ができてよかった。
そして、今日は積み込みだった。
今までは、最終稽古の後にそのまま積み込み、ということが多かったので、仕込みの前日が積み込みだけというのは、だいぶ楽ちんな気がしていた。そこで、倉庫にしまってある荷物を取りに行くのも、購入した大道具がうちに届くのも、今日の予定にしていたのだが、こういうときに限って不測の事態が起こるものである。のっぴきならない事情で、7時ぐらいまで残業することとなった。
ひょえ〜と思ったが、事情が事情なので、とっさに気持ちを切り替える。こういうことはいつでも起こりうることなので、じたばたしても始まらない。問題は、倉庫の営業時間内に間に合うかということと、大道具を遅い時間に再配達してもらえるか、という点である。他の、まだ終わっていない荷造りなどは、自分が倍速でやれば、半分の時間で終わるはず。
結局、仕事が終わった後にあちこち連絡をとって、どうにか間に合うように頼み込み、了解を得る。それでまずホッとする。倉庫から荷物を運び出す。全部宅急便で小屋に送ってしまいたい衝動に駆られたが、会計・晶子さんの顔が頭をよぎり、持って行ったキャリーにしおしおとくくりつける。帰宅ラッシュで思い切り迷惑がられながら、電車で運んで帰った。ほどなくして、大道具も到着。今日はちょっとばかり焦ったけど、倉庫のおじさんも運送屋のおじさんも、感じのよい優しい人で救われた。
そして11時半過ぎ、染谷さんのトラックが到着。道具類を全部積み込んでもらったら、いきなり部屋が広くなった。わ〜い。いつものことだが、積み込みを終えるとどっと疲れる反面、いよいよあとは小屋入りするだけという雰囲気になって、気分が高揚する。明日が楽しみだ。
けがも事故もなく、無事に、充実した公演となりますように。
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| 10月4日(火) |

チラ見せ・・・ |
| 土日は、両方ともロング稽古だった。倍出し通し&かまない通し&倍速通し&衣装・小道具付き通しの通しスペシャル。また、照明の齋藤さん、渡辺さん、音響のとまっち、当日ビデオ撮影の速水さんと、いろいろな人が稽古場に来て、稽古後は打ち合わせスペシャルだった。こうしていると、二日間の休みなんてあっという間。そして、来週にはもう本番だ。 |

続きは劇場で! |
| ◆◆◆ |
今日はinnocent sphereの「ZION」を観に行った。この劇団は、MINMINがデザインを担当している劇団なのだが、本当にすばらしい作品を創るので、いつも楽しみにしている。今回はまさに公演直前で、準備や荷造りもあって忙しいので迷ったのだが、やはりここを外すわけにはいかない。「ちょっと雰囲気似てるかもしれませんよ」というMINMIN評にも興味を惹かれて観に行った。
今回から全席指定となり、私の席は最前列のどセンターだった。おおー。恒例の映像は近すぎてちょっと見にくかったけれど、役者の表情がとても近くて、食い入るように見てしまった。
再演モノということで、脚本の構成的には今までもっといい作品もあったように思ったが、そんなことは棚に上げられるくらい迫力があって、圧倒された。後半、土砂崩れで埋まった防空壕に閉じ込められた人たちが、狂気に駆られて殺し合っていく様は、人間の本能的な負への傾倒、まさに負のエネルギーに満ち満ちていた。ここまで描き出すことができるんだと思い、感動するとともに大いに刺激を受ける。はじめ、何もかも白尽くめだった衣装や小道具が、展開が進むにつれ、血や泥にまみれていく様子がなんともリアルだった。まあ、衣装さん泣かせであることは間違いないが。。。
でも、それだけ負のエネルギーを描き出しながらも、どこか、それに対する嘆きや、再生を信じる力のようなものが、作品全体に流れているのだった。私にはこんな作品はまだ創れないからおこがましいけど、何を悲しみ、何を大切に思うのか、そんなセンスが自分と似通っているような気がして、いつも見心地がいい。帰りがけ、ロビーに作・演出の西森さんがいたので、遠目ながらしばし見つめて劇場を後にする。あの頭の中に、あれだけの世界観と、実現力が詰まっているんだなあ。
そんなこんなでボーっとしていたら、帰り道では乗換駅を間違い、表参道を原宿まで散歩することになってしまった。でもまあ、あれこれ考えながら夜道を歩くのもなかなかおつだった。 |
| ◆◆◆ |
ああ、寝るのが惜しい。
準備に忙しいからだけではなくて、もっともっと今回の作品に触れていたいのだ。考えていたいのだ。寝てしまったら、少なくともその時間は考えることができない。
今回、私なりに、今までとは違う覚悟で臨んできたつもりである。この期に及んで、またあらためてこの作品で伝えたいメッセージを、役者陣と語り合っている。話していると、今でも表情がゆがむほど、「負のエネルギー」が自分の中にわいてくる。それを伝えることで、きっと役者たちにもとても負担のかかることを要求していると思う。でも、今回の作品は、それを表現できたときに初めて、伝えたい思いに手が届くのだと信じている。
そして、そんなもろもろの思いや意気込みだけを先走りさせずに、最後まで演出としてベストを尽くしたいと思う。小屋入りまであと3日。今からできることはまだまだあるはずだ。 |