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 気 球 日 記
 11月29日(土)
 
 私は、今や希少価値とも言えるPHSユーザーだが、私のPHSの蝶番部分が一月ほど前から欠け始め、グラグラになってしまった。まだ機種変してから半年ちょっとしかたってないし、乱暴もしてないのになんだよぉ・・・と思いつつ、でもこのまままっぷたつになってデータが全部飛んでしまうのも嫌だったので、サービスショップに連れて行った。「あー、じゃあ修理に出しますんで、代替機を使っていてください」と言われ、電話帳のメモリーをとりあえずその代替機にうつしてもらう。しかし、当然のことながら、今までのメールのデータなどはコピーできないので、全部失われてしまうことになった。
 まあ、いいんだけどね・・・とっといてもどうせ見ることもないし。でもなんか、メールが消えるって寂しいな。受信BOXにも、送信BOXにも、ちょっとは思い入れのあるメールもあったのに。ま、消えたからって忘れてしまうようなメールなら、もともと大したもんじゃないんだけど。

 昨日、アドリブ小劇場に芝居を見に行った。アドリブ小劇場は、昨年の旗揚げ公演のときに使わせていただいた小屋。浅草橋に行くのはあのとき以来初めてだったが、なんだかとてもなつかしかった。駅から劇場に向かうあの道を、いろいろな思いで何度も歩いたものだ。
 今回は、何度か気球計画の稽古場に見学に来てくれた役者さんが出演するということで案内をいただいたのだったが、その劇団は、偶然にも公演のたびに誰かしら私の知り合いが出演しており、実は今回で見るのが3回目。また、今回は作・演出が女性ということで、どんな芝居かなあと楽しみにしていた。
 繊細にていねいに作られた芝居で、でも私ならまずやらないような演出もあり、役者陣もそれぞれ力があって、よくキャラクターを立てていた。全体的には、もっと凝縮したり、感情を深めたりできそうなところもあったけど、女子高校生役の2人が、とてもピュアな雰囲気で、いい感じだった。大人になりかけの人間って、どうしてあんなに痛々しくて、強くてきれいなのだろう。
 あと、見ていて思ったのが舞台美術のことだ。舞台美術も、考え出すとおもしろくて、私もいろいろな状況が許すならできるだけ作りこんでやってみたいと思う方だけれど、この芝居は細かい舞台美術に凝るあまりか、暗転が長すぎてひどいときには明転したときまぶしくて目が開けられなかったりしたので、そこは工夫の余地があると思った。暗転は、こちら側の都合である。暗転中、芝居そのものは一時停止していても、実際の時間は流れているわけで、暗闇にいるのは不安だし退屈もする。うちの芝居も暗転は決して少なくないけれど、やっぱりできるだけ少なく、短い時間でおさめるべき、とあらためて思った。まあ、あの小屋の使いにくいところは、よく分かってるけどね。

 さて、日は変わって、今日ははりうねえさんと一緒に、青山劇場へつかこうへいの飛龍伝を観に行った。
 私は、数年前、内田由紀のときの飛龍伝を観た。飛龍伝を見るのはそれが初めてだったし、有名な作品だったので楽しみに観に行ったのだが、あまりにおもしろくなかったのでびっくりした思い出がある。なので、今日はリベンジのつもりだった。今回は私の好きな筧利夫が出ているし。そして主役の神林美智子役は、広末涼子である。席は一階席の後ろのほうだったが、位置がどセンターだったので、舞台全体がとてもよく見えた。
 そして、いやあ、びっくりした。同じ作品でも、こうも違うとは。今日のは、おもしろかった!広末涼子は、あまり舞台向きという感じではなかったが、クライマックス近くの語りでは、つい涙を誘われてしまった。男たちが、彼女に別れを告げて次々と闘争に身を投じていくシーンは、前は全然共感できなかったのに、今回はすごくカッコいいと思った。それは、美智子の強さであったり、存在感ゆえなのだろうか。そして、なんつってもやっぱり筧利夫。あの人の中には、どうしてあんなに真剣さとバカバカしさがうまく共存しているのだろうか。そのバカバカしさが根本的なところで救いになっているのだった。だから、美智子の裏切りを知ってののしっているシーンでさえ、見ていてただツラいだけのシーンにはならないのだ。ほんと、いい男。
 舞台上は、ひな壇があるだけでいつものように素舞台だったが、照明がそれだけでショーになりそうなほどものすごくて、とてもきれいだった。ダンスもかっこよかった。また、舞台中、私が高校時代よく聞いていた浜田省吾の歌がたくさん使われていたので、なんだか妙に感慨深かった。
 はりうねえさんにとっては、’92の飛龍伝が最も強く印象に残っているらしい。そのときの筧利夫は、今回以上だと言う。今度、ビデオを貸してくれるというので、彼女を魅了した飛龍伝を私も楽しみに見てみたいと思う。はりうねえさんは、やはり作・演出をする人なのだが、今日は、芝居の前にも後にも、2人でたくさん芝居のことをしゃべっておもしろかった。彼女は、私にはとても書けないような、ダイナミックな芝居を書く。彼女と、戯曲について、演出について語るのは私にはとっても刺激的でおもしろい。がんばろう!という気持ちにさせられる。
 そして夕方、ソワレの回をまた見に行く彼女を、渋谷の路上で見送った。よっぽど好きなんだなあ・・・。

 そして、ブラブラと渋谷の街を歩いた。どこもクリスマス一色で、さまざまなツリーが立っていて、とてもきれいだった。
  
 
 11月26日(水)
 
 第4回公演の日取りが決まった。
 来年の5月15日(土)・16日(日)、小屋は前回と同じスタジオはるかにて。時期的には、第2回公演のときとほとんど同じである。まだまだ、本を書くのもこれからだけど、せっぱつまらないと何もやらない私としては、これでいよいよ気持ちが引き締まる。5月か・・・芝居をやるにはいい季節だな。ずっと先のようだけれど、きっとすぐに来てしまうんだろう。昨年から今年にかけての年末年始、家にこもって本を書いていて、題材が題材だっただけに不謹慎にも正月から葬式の本ばかり買いあさり、こんなことでいいんだろうかと我ながら思っていた。世間がハレの時には、やはりハレらしい過ごし方をするものだ、と痛感した正月だったが、やっぱり今年もまた同じような感じになりそう。まあ、いいさ。まずは本を書かなければ、祭りはできない。あ、でも葬式モノはもうやめよう。
 というわけで、また次回もよろしくお願いします。今のうちに、来年の手帳に予定を書き込んでください!そして、キャスト&スタッフ募集しています。興味をもたれた方、ぜひ一度メールくださいね!

 昨日は、恋愛メニューメンバーで、永福町の大八に飲みに行った(次の本番を控えている賢ちゃん、お仕事で来られなかった和世さん、次回、ぜひ今回のぶんまで!!)。大八のご夫婦は公演を見に来てくださったので、そのお礼参りを兼ねて。
 冷たい雨の中、7時ごろからなんだかんだと8人も集まって、また酔っ払ってしまった。何を話していたというわけでもないのに、あっという間に時間は過ぎて、たぶん終電ぎりぎりぐらいだったのではないかな。もう、みんな飲み過ぎだって。
 
 一日一日が、過ぎていく。今日の私は、明日の私につながっているか。今日の想いは、明日の想いにつながっているか。だいじょうぶ、きっと在り続ける、この体の中に。
 
 
 11月24日(月)
 
 3連休、最後の日。風が冷たくて、もうすっかり冬なんだと感じさせる空気だった。
 
 今日は、知り合いの人と中野のザ・ポケットへ、劇団フライング・ステージ第25回公演「PRSENT」を見に行った。そもそも、うちのリンクに入っている「Bohemian Storm」のリンク集を見ていて、「関根信一氏主宰。ゲイをカミングアウトした劇団。どこか切ない、そして優しい人々が舞台を走る。代表作に池袋演劇祭グランプリ『陽気な幽霊』などがある。と紹介文があったので、「へぇ〜」と思って見てみたら、ちょうど公演間近だった。自分も先日、ゲイが登場する芝居を公演したばかりだし、これもなにかの縁かと思って、ふらっと見に行った次第。
 そんな、偶然の出会いだったのに。とってもとっても素敵な舞台だったよ。今日が楽日でなければ、声を大にして宣伝したいぐらい。
 ストーリーは、交際3年になるゲイのカップルのうち、一方がHIV陽性であることが判明して、そこから繰り広げられるヒューマンドラマ。あちこちで、ぐさぐさ来るセリフがてんこ盛りで、そして、笑いの要素もまた絶妙で、私はたぶん場内で一番泣いて、一番笑っていたと思う。まあ、25回公演だけに、お客さんも常連の方が多いみたいで、私にはよく分からないところでウケていたりもしたけれど、作品の雰囲気からして、とてもあたたかい、シンプルな愛に満ちている感じがして、私はとてもいい時間を過ごした。2時間だったけど、最近見た芝居の中で一度もだるいな、と感じなかった芝居は久しぶり。とにかく、登場人物一人ひとりが愛すべき人間で、だるいどころか、もっともっと見ていたくなったほどだ。そして、舞台にそこはかとなく漂うクリスマスの雰囲気・・・最後に、何気なく置かれていたオブジェが実はクリスマスツリーだったのだと気づいたとき(ほんとは全然違ったりして)、クリスマス大好きな私としては、なんておしゃれなんだ!と感動した。青い照明が、とてもとてもきれいだった。

 ゲイや、エイズを取り入れた芝居は、正直言ってそんなに珍しいわけではない。自分もこないだ書いたし。私自身は、知り合いにゲイの人もいないし(知らないだけかもしれないけど)、自分も同性愛ではないし(まだ目覚めてないだけかもしれないけど)、実際のところはよく分からないんだが、恋愛という感情においては、相手が同性だろうが異性だろうが、そんなに変わらないんじゃないかと想像している。そんなことより、どんなふうに相手を想うか、想うがゆえに自分はどうするのか、そのことの方がよっぽどその人の人間性を物語るのだ。愛する人が病気だとしたら、愛する人が死ぬとしたら、愛する人が孤独だとしたら、自分はどうするだろう。そんなことを、ずっとずっと考えながら見た。自分の感情や現状や過去を、いろいろひっくるめて本当に受け入れることは難しい。相手のことならなおさらそうだ。でも、それができるとしたら、やっぱり相手を愛していることしかないんだろうと私は思った。

 同性愛に対する社会の風当たりは、まだまだ強いだろう。そして、HIVの問題は、なおさら複雑な問題だと思う。今日の芝居でも少し出てきたけれど、パートナーにも感染を告白できないカップルは多いという。・・・きっと、これらは、これだけタブーのなくなった現代社会に残された、数少ない出口のない問題なんだと思う。それだけに、関わる人の生きざまが問われるし、想いでしか救い合えない。だから芝居になるんだろうな。いつの日か、同性愛がそれほど特別なことではなくなり、HIVに特効薬でもできたら、きっと今ほど芝居にはならないんだろうけど、でも、私は早くそんな日が来ることを望む。
 あ、でも今、AIDSの問題は、全然同性愛者に限らないので、みんなで注意しましょう。

 その後、知り合いの人とちょっと飲んで帰った。いい芝居を見て感情のふたが外れていたせいか、その人とはあまり慣れてないので力加減が分からなかったせいか、なんかそこまで言わなくてもいいことまで言い過ぎてしまい、きっと相手を傷つけたと思う。帰り道、後味が悪かった・・・。まあ、こんなこともあるか・・・。
 
 11月18日(火)
 
      

 おとといの日曜日、反省会を行った。
 どうしても公演を見に来られなかった前回客演のタカヒロ氏も来てくれて、はじめにみんなで公演のビデオを見た。私はダビングしながら何度も見たのに、やっぱりまた見入ってしまう。稽古場にいたときみたいに、またぐあーっと集中力を持っていかれるのを感じて、公演が終わってからの一週間、どんなに自分がボケッと過ごしていたかがよく分かった。幸せだったんだなあ、この感覚に浸っていられた日々。
 それからユージンからの営業活動報告があり、会計報告をし、ビデオや写真を配り、それぞれ今回公演の感想などを述べ合う。あっという間に時間が来てしまったので場所を飲み屋に移し、そこから合流したみんなも交えて、あらためてお疲れさまの乾杯。結局朝までコースになり、2週連続の徹夜飲みはさすがにキツかったが、でも楽しかった。途中合流組もいたけれど、公演後1週間で、また全員が集まれて本当によかったと思う。

 これで、恋愛メニューは、いよいよ終了した。
 今回の公演に携わってくれた人たちに、私は本当に感謝している。みんな、どうもありがとう!
 役者のみんなには、自分の役を愛してもらえて本当に幸せだった。今回、それぞれに個性の強いキャラだったし、ちょっとでもいやだなと思っていたらできないような感情芝居ばかり求めてきたけれど、「今回の役が一番好き」とか、「この役は自分にしかできない」と言ってもらえるたび、とてもうれしかった。
 スタッフのみんなには、私の気の回らない部分をすごくよく見てもらって、本当に助かった。今回、衣装も音響も照明もとても好評だった。それに、狭くて難しい出ハケを整理してくれたのも、ちょっとややこしいチケット扱いを担当してくれたのもみんなスタッフで、はっきり言って私は楽屋裏がどんなふうになっていたのか、あんまり分かってない。そんな状態で演出に専念できたことは、ほんと幸せだった。
 まったく同じ顔ぶれで、芝居ができることは、もう二度とないのかもしれない。そう思うと、やっぱりちょっと悲しい。でも、そう思えるような仲間に出会えて本当によかった。きっと、いつかまた一緒に芝居やろうね。
 
 11月14日(金)
 
 ああ、やっと平日が終わった・・・。
 なんと眠い一週間だったことか。だがしかし、ここのところしばらくいろんな仕事を先延ばしにしてきたせいで、容赦なくしわ寄せがたまり、眠い目から出血しそうな感じの今週だった。今日なんか、会議の途中に居眠りしてしまい、静かに寝てればいいものを、体勢が崩れて騒音を立ててしまったので、隣の人に苦笑されてしまった。

 それにしても、もうあれから一週間がたつんだな。先週の今日は仕込みをしていた。本番が終わってから、それでもまだ何かをしていたくて、残務整理にいそしんでいる。そうしている間にも、雲のように流れて、移り変わっていくキモチ。同じところにずっととどまることは、できないのだなあ。あの日の私は、こうしてだんだん遠くなる。今までも、どんなに最高だと思った瞬間も、どんどん遠のいて過去になっていった。そして、今回みたいに、それを上回って楽しい時間がまた訪れ、それも終わってまた遠のいていく。でも、まだ行かないでね。
 舞台の上は、いいなあ。そこにしか存在し得ない空間を、かっきりとそこに置いていけるのだ。なんの疑う余地もない。その瞬間の生きざまのままに、懸命にそこに存在している。だから私は、舞台が愛おしいのかもしれない。

 明日はひさびさの休日。ずっとひとりで過ごすつもり。疲れたときは、ひとりでいるのが大好き。
 そして明後日は反省会だ。
  
 11月12日(水)
 
 みごとに廃人と化している。
 頭の中がぼーっとして、なんとなく宙を歩いているような感じで、やるべきことをやっていてもその実感がない。虚脱感。たった3日しかたってないのに、みんなに会えないことがもうこんなにさみしい。
 どんな公演でも芝居のあとは大なり小なりこうなるもので、十分に予測できること。だからいつもは、本番前から少しずつ気持ちの整理をして、終了後の精神状態に備えていた。でも、今回は最後まで密着して芝居を作った感じがするので、そんなふうに受け身をとる余裕すらなかった。
 昨日から、食欲は戻ってきた。決して落ち込みや緊張でものがのどを通らなかったわけではなくて、臨戦態勢というのだろうか、攻撃性が高まっているがゆえに、食欲が減退していたのだ。ここ1〜2週間、お腹いっぱい胸いっぱいで、ちゃんと食べる気が全然起きなかったので、ウィダー・イン・ゼリーにはずいぶんお世話になった。もうすぐウィダー・イン・アドベンチャーで、景品がゲットできそうだ。おかげで体重2kg減。イェ〜イ。ま、私はもともと大食いだし、食欲が復活してきたのできっとすぐにもとに戻ると思うけど、昨日はマックのバリューセットが食べ切れなくて、自分でもビックリした。胃袋が小さくなったんだな。
 それでも今はまだ、会計報告やら集客状況のまとめやら、残務整理に追われているからまだいい。そんな仕事も終わって、いよいよ恋愛メニューに触れていられなくなるときが来たら(多分来週あたり)、また新しい虚脱感がやってくるだろう。まあ、いいや。かかってきやがれ。
 
 さて、昨日はタカヒロの芝居を観に行った。
 前回公演に出演してくれた彼は、今回は公演前の稽古で本番には来られなかったのだが、初日・楽日ともに飲み会には参加してくれたという、ある意味、皆勤賞。
 劇場のシアター風姿花伝には、初めて行ったが、今年8月こけら落としという新しい劇場だけあって、とてもきれいだった。大きさもキャパもいい感じで、いつかここでやってみたいなーと思った。
 芝居は、相変わらず高いテンションで、演技を超えたエネルギーを感じた。よく見せようとなんか全然していない。いい話を聞かせようとなんか全然していない。役者一人ひとりが、体からはちきれそうなぐらい、全身で表現している。いったい、どんな稽古をしているんだろう??
  
 11月10日(月)
 
 第3回公演「恋愛メニュー」が終わった。
 観に来てくださった方々、本当にありがとうございました。心から感謝します。
 そして、一緒につくってくれたみんな。あなたたちと一緒にいられて、私はとても幸せでした。ありがとう。

 今回公演の大きなチャレンジは、映像を使ったことと、2日間5公演というハードスケジュールだった。
 映像は、結局パワーポイントを使ってプロジェクタでホリ幕に投影したのだが、パソコンがフリーズしたら一巻の終わりなので、けっこう冒険だった。なんとかビデオに落とせないか、とも考えたが、パワーポイントをビデオに落とす方法が分からず、結局パソコンを直接プロジェクタにつなぐことになった。
 私は当日はプロジェクタ担当だったので、音響ブースのとまっちとともに、2階席からずっと公演を見ていた。今までは公演中は客席で見ているだけだったので、公演中に仕事があるだけでも(それも最初と最後をしめくくる大事な映像なので)ちょっと緊張した。また、2階席だと舞台だけでなく前半分ぐらいの客席も上から見下ろせて、お客さんの反応が手に取るように分かるのも、今までにない経験だった。
 土曜日は2回、日曜日は3回の公演スケジュールだったが、やっぱりちょっと強行軍だったかな。1日3回公演だと、あいだの時間がほんと短いので、次から次で忙しい。でも、意外と役者は集中力を切らさず、乗り切ることができた。
 千秋楽の公演の前、2階席でいつものように演出ノートを開いた私は、「あ、もうこの芝居にダメ出しは必要ないんだ」と気づいて、ノートを閉じた。そして、本当に観客の気持ちで芝居を見た。千秋楽はさすがに役者の気合も違って、舞台にいるみんながほんとカッコよくて、ほとんど惚れそうだった(親バカです)。
 そして、楽日の夜はもちろん打ち上げ・・・私はけっこう早くに記憶があやしくなって、途中財布をなくして交番に届いていたり、まあ相変わらずなんだかんだとありました。

 作品的には、きっとまだまだな部分もあったと思う。それは、私の書いた本のぬるさだったり、演出の甘さだったり。テーマに対して、どこまで突きつめるかということを、それをどんな見せ方にするかということを、書いている段階から稽古の最終段階まで考えた。シーンによっては、初日と楽日でさえ違ったし。
 それにしても、臨機応変で力のある役者に恵まれ、賢くて行き届いたスタッフに恵まれ、私は非常に幸せだった。客入れの前、舞台でつかの間の時間を過ごす役者の、「この公演に参加できてよかった」というつぶやきが聞こえたときには、また泣きそうだった。まったく、今回の公演はいろんな意味でよく泣いた。まさに号泣メニューだ。

 今回、驚いたのは、いつもチラシを置かせてもらっている居酒屋のご夫婦が見に来てくださったことだ!そのお店とは、気球計画を立ち上げるとき、一番最初の打ち合わせのあとに初めて立ち寄り、それ以来の付き合いである。永福町で稽古のときには、たいてい稽古帰りに寄るのだが、いつも格安でおいしい思いをさせてもらっているのはこっちの方なのに、わざわざ見にまで来てくださるとは。また、阿佐ヶ谷で稽古のときにもいつも決まったお店で飲んでいて、打ち上げもそこを使わせてもらったのだが、店長がお祝いにとワインをプレゼントしてくれた。まあ、気球計画がいかにふだんから飲みすぎかっていう話なんだけど・・・。

 ああ。もっと観たかった。
 楽しかった。
  
 11月7日(金)
 
 昨日が、最後の稽古だった。
 課題の残るシーン、もう一度考えたいシーンを、抜き稽古する。今回の作品は、本番の舞台が始まるそのときまで、変わり続ける感じがする。稽古場でみんなに会えるのもラストなので、最後はみんなで遊んだ。楽しかった。
 稽古後、賢ちんさんと五反田へ。そこで啓介くんと合流し、照明機材や大道具の積み込みを行う。照明さんのお宅で灯体を積み、音響のとまっち宅で機材を積み、途中の公園でシズを作り、我が家でソファやパネル等の大道具類を積み込んだ。そこで私は降ろしてもらって、啓介くんと賢ちんさんを見送る。
 大道具類がなくなったら、私の部屋はとたんに閑散としてしまった。今まで狭くて狭くて苦労していたのに、なくなったらなくなったでなんだか寂しい。そして、ああ、いよいよ小屋入りするのだ、本番が来るのだ、と実感して、気持ちを引き締めた。

 そして、今日はいよいよ小屋入り。
 朝、仕事に向かっている途中、晶子さんからメールが来る。あらためて、劇場でのこれからの3日間を満喫しようと思った。午前中仕事をして、午後から小屋入りする。私が入ったときには、舞台監督の賢ちんさんを中心に、建て込みが終わろうとしているところだった。受付ではマヤちゃんが当日パンフの準備、和世さんがクリップボードの買出し。朝には乃維ちんが来て楽屋づくりをしていってくれたそうで、どんどん作業が進んでいた。すばらしい。私は、さっそく映像の仕込みと場当たりの準備をする。
 場当たりは、予定時間を1時間半ほど押して始まったが、順調に進行。音光堂さんのつくる明かりが美しくて、うっとりしてしまった。そして、ふと昔のことを思い出した。
 もう何年前になるかわからないけど、まだ私がちゃんと舞台に立ち始めて間もなかったとき、音光堂さんに照明をやってもらった公演で、立ち位置を間違えてしまったことがある。本当は決まった立ち位置でサスの中で芝居をするはずだったのに、私はそのエリアを越えて違う立ち位置に行ってしまったのだ。「どーしよー!」と思っていたら、ふっと照明が変わって私のいるエリアが明るくなり、何事もなかったように芝居が進行していった。打ち上げで「あのときは・・・」と謝りつつお礼を言ったら、「こっちは全体が見えてるからねー」とこともなげに言われた。私はあの時に続いて、今回もまた助けてもらっている。明かりが入るだけで、架空の空間が時間を演じ、季節を演じ、雰囲気を演じる。今日は、あらためて照明の力に感動した。
 そして、毎度お世話になっているとまっち音響。今回は、個人的にも忙しい中をかいくぐって、よく引き受けてくれたと思う。感謝である。今回の音は、今までの作品とはちょっとイメージが違う。今までは、どちらかというと「これでもか!」と場の空気を後押しするような曲が多かった。ところが、今回は不思議なほど曲が意識を左右しない。そういうことを考えての選曲だと思うが、さすがとまっち!という感じである。
 そんなこんなで、場当たりは手際よく進み、なんと当初のタイムスケジュールより早めに場当たり終了!これはうれしいことだった。場当たりって、長ければ長いほど疲れるし。そしてゲネも予定通りに運び、本番に向けての課題がいよいよ明らかになってきたところで撤収時間の9時となった。小屋を出ても、今日のゲネについてああでもないこうでもないと話は尽きず、しばらく劇場の前で立ち話してしまった。もちろん今日は、あしたにそなえて飲まずに帰った(でも家で飲んだけど;;)。

 私は子どもを育てたことはないけど、本番前の演出って、花嫁の父になったような気分だ。自分の中から生まれ出たものが、いつのまにか独自の人格を持って、大きくなっていく。そして、どんどん自分の手を離れていく。

 明日からいよいよ本番。後悔のないように、できるだけのことをやる。5回とも全部、見に来たお客さんにとっていい時間になりますように。
 
 
 11月4日(火)
 
 今日は朝から仕事。昨日までの3連休、どっぷりと芝居にはまっていたので、今日から現実生活に戻れるのかちょっと心配だったが、思いのほか仕事に集中できて、たまっていた仕事がはかどった。昨日までの3日間、空を駆けていたとするならば、今日は地に足をつけて歩いていたという感じだろうか。着々とした時間もまた、こまめな達成感があっていい。
 夜は、また稽古。だが、今日は抜き稽古なので、先週末の2日間5回通しを思えば、まだまだ気持ちが軽い。帰りにいつもの大八で飲みながら、恋愛メニューメンバーでここに来るのももう最後だろうな、と思った。というか、稽古帰りに飲むのももう今日で最後なのだ。明後日の稽古場最終稽古は、そのあとに積み込みがあるので、とても飲んではいられないし、その次の日は、もういよいよ小屋入り。そう思ったら、なんかいつも以上に盛り上がってしまい、また大人げない飲み方をしてしまった、と心ひそかに反省。
 ひとつひとつのことが、もう最後のことになっていく。そのために、ずっと稽古をしてきたのだ。ずっと前から、本番の日に射程を置いて。
 明日は本番前最後の、稽古のない日。大事に過ごさなくては。
 
 11月3日(月)
 
 3連休最終日。
 最近の気球日記は、酔って帰ってきてから書いていることが実は多い。すると、翌朝読んで「こんなこと書いてたのかー」と自分でも驚く。たまに文法が変だったりするので直したり。でも、ほとんど意識がないのにわりとまともなことを書いている自分にびっくりする。

 今日は、朝から賢ちんさんとパネルの仕上げ作業をして、パネルに貼る布を切ったりする。布はもちろん激安の日暮里で購入。ちょっとほつれていたり汚れていたりもするが、今回買った布はメーター100円なので文句なし。「ビリビリビリ!」「きゃーやめてー」「俺の言うことを聞け!」「ビリビリビリ!」と日活ロマンポルノ系の小芝居をしながら手際よく作業は進み、1時ごろ賢ちんさんは帰っていった。
 午後、母の見舞いに行く。母は数日前からまた入院してしまったのだが、行ってみたらわりあい元気そうだった。昨日・一昨日があまりに濃密だったので、芝居関係以外の人としゃべるのが久しぶりなような気がした。違う空気を吸ったような感じ。今回、母は観に来られないかもしれないな。ちょっと残念だけど仕方ない。母はなんだかんだと私の芝居をいつも応援してくれている。私の芝居をと言うか、芝居を含めて私を、と言うか。

 濃い3日間だった。明日の朝から、ちゃんと日常に戻れるかしら。早く寝たほうがよさそうだ。このところ、いつでも目を開けたまま眠れそうなほど眠たい。でも、疲労感のわりには顔色がよくて生き生きしてるし、元気。無理をきかすのは体力だけじゃないな、とつくづく感じる。
  
 11月2日(日)
 
 本番1週間前。
 昨日今日と、本番前最後の週末だったので、本番とまったく同じ時程で通し稽古を行う。
 今回公演は、チラシを送った友達からも「あなた、サドですか」とつっこまれたが、2日間の本番のうち、5回の公演を行う。つまり、2日目は1日3回の公演なのである。私としても、初めての試みだ。
 
 昨日は、初日ということで、14:00と18:00の2回の通し稽古。昼間の稽古には、照明の三瓶さんが見に来てくださる。そして、夜の回には、音響のとまっちと撮影の乙間さんが。どちらも初めて実際にプロジェクタを使って映像を流してみるということで、上映係の私としてはけっこう緊張。パソコンからつないで投影するのは、バグったりフリーズしたりと、何かと問題がつきまとうので本番までにぜひともなんとかしたいと思った。今までは、本番となると客席で芝居を見守ることしか仕事がなかったけれど、今回は最初と最後をしめる大事な作業。かなり緊張である。
 2日目の今日はいよいよ12:00・15:00・18:00と3回通し。そんなの、わたしだって経験したことはない。小屋のキャパの関係で、いつもの4ステではちょっと少ないと思ったのと、本番は多いほど楽しいと思うから今回は5ステにしたのだったが、終わってみて思ったのは、たしかに疲れるけれど、集中すれば、なんとか切らさずにやれる!ということ。今日の3回の中では、最後が一番よかった。やるしかない!

 昨日も、今日も、舞台上にも立っていないくせに、5回の通しを見つめていて私はものすごく疲れた。緊張してしまった。きっと、自分の感情の動きに合わせて動けないからだ。稽古を見ていると、そのへんのエネルギーが身の内にこもってきて歯がゆい。稽古に感情が入ってくればくるほど、なおさらそうだ。
 疲れていたので、まっすぐ家に帰って早く寝ようと思っていたはずなのに、昨日も今日も稽古帰りにみんなで飲んでしまった。またそれが、とても楽しいのだ。稽古場で燃え上がった感情は、やはりみんなと飲むおいしいアルコールで沈めなければおさまりきらぬものらしい・・・でも、飲み会でもずっと芝居のことを話していたな。どんどん、私も気づかなかったような脈絡で、エピソードがつながっていく。ほんとに、みんなカッコいいと思う。私は、そのカッコいい人たちに役を生かしてもらっていることがうれしい。「誰にもこの役をゆずりたくない」と言ってもらえることがうれしい。
 
 今回の芝居は、作者の私でさえ、見るたびに新しい発見がある。「ここは、これでいこう」とか、形で決めてかかる人がいない。本番までのラストスパート、がんばります。